No.225
糖尿病って?
内科・精神・老年 | 2025年07月発信
日本で糖尿病が強く疑われる者の割合は、最新の令和元年「国民健康・栄養調査」では男性19.7%、女性10.8%であり、この10年間でみると、男女ともに有意な増減はみられませんが、年齢が高くなるほど割合が高くなっていきます。このように「血糖値が高くなる病気」である「糖尿病」とはどのような疾患で、なぜ治療が必要なのでしょうか?
糖尿病とは
糖尿病は、インスリンが十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖(血糖)が増えてしまう病気です。インスリンは膵臓から出るホルモンであり、血液中の血糖を一定の範囲におさめる働きを担っています。血糖値が高いだけでは無症状の場合もありますが、血糖値が高い状態が何年間も続くと血管が傷つき、目詰まりすること(動脈硬化)で様々な臓器が障害され、合併症が引き起こされます。
ひとたび合併症が出てしまうと、様々な症状や不具合を伴うことがあります。心臓の血管が細くなると狭心症、詰まると心筋梗塞を発症して、生命に関わる危険な状態となります。脳の血管が詰まると脳梗塞、破れると脳出血になり、手足が動かなくなったり、嚥下(食物を飲み込むこと)ができなくなります。眼にある網膜の血管が障害されると視力が低下したり、失明してしまう危険があります。また腎臓が障害されて機能が落ちてしまうと透析が必要になり、日常生活が著しく制限されます。
このように糖尿病は「血管が障害されたり、血管が詰まってしまう」ことにより、生命に危険が及んだり、生活の質・人生の質(QOL:クオリティ オブ ライフ)が低下することがある病気なのです。
治療の目的は?
それでは糖尿病を治療する目的とは何でしょうか? 糖尿病の治療の目的は、血糖値をコントロールすることで糖尿病の合併症を予防し、また発症してしまった合併症の進行を抑制することです。ここでのポイントは「血糖値を改善するだけ」ではなく、「血糖値を改善して合併症を防ぐだけ」でもなく、「健常者と同様のQOLを保ち、健康寿命を全うさせる」ことが重要なのです。
糖尿病の治療とは?
糖尿病の治療には、〇食事療法、〇運動療法、〇薬物治療がありますが、先に記したように「合併症を防いで、健常者と同様のQOL、健康寿命を全うする」ためには、血糖値の改善だけではなく、体重・血圧・血液中のコレステロールなども良好にコントロールすることが重要とされています。そのためには薬物治療だけでは不十分であり、「患者さんに応じた食事療法や運動療法」が重要となります。また、薬物療法についても「血糖値を下げるだけの薬」ではなく、それぞれの患者に適した「血糖値を下げた上で合併症を減らし・臓器を守る効果のある薬」の選択が必要となってきます。
日々の診療が皆様の健康の一助になれれば幸いです。
【本原稿の執筆者】
たけもと内科 竹本 利行