No.223
帯状疱疹について
内科・精神・老年 | 2023年11月発信
帯状疱疹は水痘(みずぼうそう)にかかったことのある人のうち、3人に1人がかかるとされていますが、近年帯状疱疹にかかる人が増えています。水痘は水痘帯状疱疹ウイルスの感染により幼少期にかかることが多い病気ですが、水痘が治った後もこのウイルスは体から排除されずに、脊髄の神経節という部位に残ります。通常であればウイルスは潜んだままで何も起こしませんが、ウイルスに対する免疫が低下した時に再活性化されて、帯状疱疹を発症します。日本では水痘ワクチンは任意接種でしたが、2014年より定期接種となり、水痘にかかる子供が激減しています。以前は水痘にかかる子供が多かったため、知らないうちにウイルスに対する免疫を獲得する機会がありましたが、水痘の患者が減ったことでその機会が少なくなり、帯状疱疹を発症する人が増えたと言われています。
典型的な帯状疱疹は、まず体の一部分にピリピリした痛みが出ます。部位は頭から足先までどこでも発症し、片側に生じることが多いとされています。約1週間後に同部位に水ぶくれを伴う発疹が出現して診断がつきます。発疹は2週間前後でかさぶたになり治っていきますが、神経の炎症や損傷により、痛みはしばらく続きます。痛みの程度は個人差が大きく、ほとんど痛みがない人から、夜も寝られないくらい痛みが強い人もいます。また最初は痛みが軽くても、途中から強くなる人もいます。痛みは日にち薬の面もありますが、平均で2~3ヶ月くらいは痛みが続きます。中には帯状疱疹後神経痛といって、数ヶ月から数年単位で痛みが続く人もいます。高齢者、最初から痛みが強い人、発疹が重度の人、部位が体幹や顔であると、帯状疱疹後神経痛が残りやすいとされています。帯状疱疹の治療は抗ウイルス薬の内服で、重症の人は点滴が必要になります。痛みのコントロールも大事で、最初からしっかりと痛みを抑えた方が残りにくいため、数種類の痛み止めの内服が必要になることもあります。強い痛みが続く人は、内服薬の追加、ペインクリニックでの神経ブロック等を要することがあります。
2016年から50歳以上を対象として、帯状疱疹の予防にワクチンの接種が可能になりました。2023年10月現在、不活化ワクチンと生ワクチンの2種類があり、どちらかを選択することが出来ます。それぞれ特徴やかかる費用が違います(前者は「効果」と「持続期間」が長い分、2回接種で金銭的にも高めの設定)ので、接種を希望される方は医師に相談してください。
ワクチンの接種により発症率の低下はもちろん、帯状疱疹を発症した場合も痛みが軽くなり、帯状疱疹後神経痛を起こしにくいなどの効果が見込めます。1回帯状疱疹にかかった人はウイルスに対して強い免疫ができるため、2回目を発症する確率は低くなりますが、何らかのきっかけで免疫機能が低下すると発症する可能性もあるため、希望のある人は数年後にワクチンを接種されるのも選択肢の1つになります。
最後に、免疫機能の低下が帯状疱疹の主な発症原因であるため、普段から規則正しい生活、バランスのいい食事、習慣的な運動により体調を整えておくことが大切だと考えます。
【本原稿の執筆者】
しらい皮フ科クリニック 白井 成鎬