No.222
発育性股関節形成不全をご存じですか?
子ども・育児・小児科・産婦人科 | 2022年06月発信
「先天性股関節脱臼」この病気は生まれた時から股関節の脱臼を認めているものです。しかし、最近では生まれる前の要因だけではなく、生まれてからの生育環境も重要だということがわかってきました。また完全な脱臼だけではなく、股関節が不安定な状態(亜脱臼)など、様々な状態のものも含むため、最近では「発育性股関節形成不全」と呼ばれるようになりました。この病気の特徴は、脱臼している側の股関節が開きにくく、太もものしわの位置に左右差を認めることがあります。また女児や骨盤位で出生した赤ちゃんに多く、血縁内での発症を認める場合があります。乳児健診(主に4か月健診)の際にチェックされますが、健診では診断が難しい場合があり、初期の時点で適切な対処がなされなければ、将来的に股関節の痛みが生じたり、正常に歩行できなくなる可能性があります。よってこの病気は早期の発見と予防が特に重要だと考えられています。赤ちゃんの足は通常M字型に開いています。その状態が一番股関節の筋肉が緩む自然な状態です。しかし足を伸ばすような姿勢(足を布で巻くなど)を取ると、不自然な姿勢となり脱臼をおこしやすくなります。特に生後3か月までの期間は股関節の発育にとても重要な期間であるため注意が必要です。抱っこをする際は、股関節がM字型になるようにします。赤ちゃんを正面から抱っこすると両膝と股関節がM字開脚となり、まるでコアラが木に抱き着いているような姿勢になります。脱臼を予防するにはこのコアラ抱っこがお勧めです。赤ちゃんを横向きの状態で抱っこできるベビースリングなどを使用する場合は、足が伸ばされた状態になることがあるため、使用する際には注意が必要です。繰り返しになりますが、この病気は予防が重要となりますので、正しい知識をもって赤ちゃんと接するようにしましょう。