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No.221

「慢性咳嗽」について 薬を飲んでも治らない「長引く咳」にお困りではないですか?

内科・精神・老年 | 2022年06月発信

新型コロナウイルス感染症が流行してからは、軽く咳き込んだだけでも「もしかしてコロナに感染したのでは?」と不安に思う人が増えたのではないでしょうか。コロナ禍では、咳だけでも仕事を休まざるおえない人もいますし、 また咳の出る病気はいろいろあるのに、コロナにばかり気を取られて、命にかかわる別の病気を見逃している危険性もあります。 このようにコロナ禍の診療においては、咳の原因の正確な診断が求められるようになってきています。
長引く咳(慢性咳嗽)とは、咳が8週間以上続く状態を指しますが、「昨晩咳が酷くて眠れなかった」と来院される患者さんの中には気管支喘息を発症していることもありますので、咳の続いている期間だけでは診断出来ないことも多々あります。
慢性咳嗽の原因を診断するには、まず第一に胸部レントゲン、必要なら胸部CTスキャン、心電図、血液検査などで肺癌、肺結核、非結核性抗酸菌症、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、過敏性肺臓炎、心不全、肺塞栓といった器質的な疾患の有無を確認する必要があります。
上記が否定された場合に、次の原因としては、気管支喘息とその亜型である咳喘息、アレルギー性鼻炎、遷延する感染性咳嗽、心因性咳嗽、逆流性食道炎などが考えられます。
その中でも慢性咳嗽の原因として頻度が高いのは咳喘息ですが、正確な診断をするのは専門医でも難しいと言われています。気管支喘息の基本病態は気管支のアレルギー性炎症であり、第二病態は気管支の収縮と気道の過敏性の亢進です。最近は呼気中の一酸化窒素濃度や総合呼吸抵抗検査などにより、気管支のアレルギーの存在と気管支の狭窄の程度を外来で簡便に評価できるようになり、気管支喘息の診断精度の向上に役立っています。
最近、One airway one disease(一つの気道で一つの疾患)という概念が提唱されています。呼吸の通り道(気道)は、鼻・口・咽喉頭の「上気道」、気管・気管支・肺の「下気道」に分類されます。上気道と下気道は解剖学的には異なる臓器ですが、咳の病態としては繋がっているということを意味します。特に気管支喘息とアレルギー性鼻炎は、それぞれ個別の病気ではなく、切っても切れないアレルギー性疾患の一つの単位として考えられるようになってきています。また、長引く咳の原因は一つとは限らず、病因が季節や経過の中で変化する可能性もありますので、咳が長引く場合は専門医の受診をお勧め致します。