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No.202

ロタウイルスワクチン

予防接種 | 2016年08月発信

ロタウイルス感染症とは

ロタウイルスは小児における急性胃腸炎の主要な原因の一つです。わが国ではロタウイルス胃腸炎は3~5月にかけて流行し、5歳までにほとんどの子どもが感染します。ロタウイルス胃腸炎は一般的に小児の感染症として知られていますが、実際には不顕性感染の割合が多くなるも、成人から高齢者まで幅広い年齢層でみられます。ロタウイルスは自然環境に比較的強く環境温度の下で長時間安定しており、通常のアルコール消毒にも抵抗力があります。また10~100個程度でも体内に入れば感染するので非常に感染力が強いです。(便1g中には1億~100億程度のウイルスが排出されます)重症度も他のウイルス性胃腸炎よりも高いことが多く、1~3日の潜伏期の後、水のような下痢、嘔吐が繰り返し起こり、重い脱水症状が数日間続くこともあります。また下痢に伴う重症な脱水以外にも、時に脳炎、脳症、心筋炎、急性腎不全など腸管外に重篤な合併症を引き起こすことがあり注意が必要な感染症です。

ロタウイルスワクチン

ロタウイルスに対してはワクチンによる重症化の予防が有効であります。現在わが国では任意接種ですが、2種類のワクチンがあり、ともに経口で接種します。1価ヒトロタウイルスワクチン(ロタリックス)は2回接種、5価ウシ・ヒトロタウイルス組み換え体ワクチン(ロタテック)は3回接種です。互いに同等の有効性、安全性が示されています。初回に接種したワクチンの必要回数を接種し、途中でワクチンを変更することはできません。両ワクチンとも生後6週から接種でき、4週間隔で2回又は3回接種します。接種できる期間が短く、初回接種はできたら生後2ヶ月に、遅くとも3ヶ月半過ぎ(生後14週6日)までには受けるようかかりつけ医と相談してください。

ワクチンの効果と安全性

ロタウイルスによる胃腸炎を防いだり、軽くしたりして、点滴や入院が必要になるほどの重症例を約90%減らします。結果として脳炎などの重篤な合併症も防ぎます。ロタウイルスワクチンの効果は極めて高いのですが、副反応として腸重積症(腸の一部が、同じ腸の中に入り込む病気です。早期に発見して治療する必要があります)になる可能性が少し増加するというものがあります。特に初回接種後1週間以内での発症がやや多いので注意が必要です。現在は使用されていませんが、初代のロタウイルスワクチン(ロタシールド)は接種後の腸重積症発生増加のため発売中止になりました。現在のロタウイルスワクチンは腸重積症のリスク上昇は小さいため、安全で忍容性は高いと考えられています(初回接種後およそ1-2人/100,000人の増加)。WHO(世界保健機関)はロタウイルスによる重症胃腸炎や重篤な合併症等による死亡を防ぐベネフィットは腸重積増加リスクをはるかに上回るとし、ロタウイルスワクチンは、世界中全ての国の予防接種プログラムに導入されるべきであると推奨しています。ロタウイルスは子どものウイルス性胃腸炎のなかでも重症になりやすく、脳炎などの発症も多いのでワクチン接種をすることをおすすめします。接種した際には、腸重積症を疑う症状(ぐったりする、泣きと不機嫌を繰り返す、嘔吐、血便など)や、その症状がみられたら速やかに医療機関を受診し、ロタウイルスワクチンを受けたことを伝えるなど、接種した医師から説明を受け十分理解してください。