No.195
細菌性胃腸炎
感染症 | 2015年08月発信
細菌性胃腸炎は食中毒として起こることが多く、夏期は特に注意が必要です。腹痛、下痢が主症状で、嘔吐は原因菌により異なりますが、伴ってもウイルス性胃腸炎よりは軽度なことが多いです。発熱もしばしばみられ、血便をよく伴います。以下に代表的な細菌性胃腸炎を挙げて解説し、最後に予防法を述べたいと思います。
◎カンピロバクター腸炎
細菌性胃腸炎の中でもっとも頻度の高い疾患です。食肉類、特に鶏肉に多く存在しています。潜伏期間は1~7日と幅が広く、一般的には経過は良好ですが、まれに重症となることもあり、合併症として時にギラン・バレー症候群(急激な四肢麻痺などが起こる疾患)を起こすことがあります。
◎サルモネラ胃腸炎
細菌性胃腸炎としてカンピロバクター腸炎の次に頻度の高い疾患です。食肉類、生卵等からの食中毒の他、ペット(特にミドリガメ)からの感染もしばしばみられます。潜伏期間は半日~2日と短く、症状はカンピロバクター腸炎よりは強いことが多いですが、1週間以内に回復する経過が一般的です。しかし時に敗血症(菌が血液に入って重症となっている状態)になることがあり、肺炎、骨髄炎、心内膜炎、髄膜炎、脳炎などの合併症に要注意です。
◎病原性大腸菌感染症
いくつかの種類に分類されていますが、腸管出血性大腸菌感染症と呼ばれているタイプがベロ毒素を産生し特に注意を要します。ウシ、ブタなどの大腸に生息し、汚染された食肉や野菜などから経口感染します。また少ない菌量で発症し、人から人への二次感染もみられます。潜伏期間は3~5日で、強い胃腸炎症状の他、溶血性尿毒症症候群や脳症などの重大な合併症を起こす可能性があります。
◎その他の原因菌
その他の原因菌としては、腸炎ビブリオ、エルシニア、ウェルシュ菌、黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌などがあります。
◎予防法
細菌性食中毒予防の三原則は、細菌をつけない(清潔、洗浄など)、増やさない(迅速、冷却など)、やっつける(加熱が最も有効)です。内臓類の生食は厳禁ですし、食肉自体も原則生食は避け、特に鶏肉、豚肉、加工肉(ミンチ、サイコロステーキなど)はしっかり内部まで加熱しましょう。食中毒以外では、ペットからの感染も多く十分注意しましょう。