No.191
異所性脂肪について
内科・精神・老年 | 2015年01月発信
皮下脂肪、内臓脂肪とは異なる、第3の脂肪と呼ばれている異所性脂肪が最近注目を集めています。異所性脂肪とは本来ほとんど脂肪が存在しない非脂肪組織に過剰に存在している脂肪のことをいいます。異所性脂肪が存在する臓器は主に膵臓、筋肉、肝臓、心臓(血管周囲)であり、過栄養、高脂肪食、運動不足の結果、皮下脂肪蓄積や内臓脂肪蓄積が一定レベルを超えると、余ったエネルギーが異所性脂肪として蓄積され、メタボリック症候群や糖尿病、動脈硬化等の病態に関わってくる事になります。
1.膵臓への脂肪の蓄積(脂肪膵)
肥満により膵臓内に脂質が蓄積すると血糖を下げるホルモンであるインスリンの合成が低下したり、インスリンを分泌する細胞が壊れて減ってしまったりすることでインスリンの分泌が低下し、糖尿病の発症につながります。
2.筋肉(骨格筋)への脂肪の蓄積(脂肪筋)
肥満により筋肉の細胞内に脂質が蓄積すると、インスリンの作用が低下するため筋肉内への糖の取り込みが低下し、糖尿病の発症につながります。
3.肝臓への脂肪の蓄積(脂肪肝、NAFLD:非アルコール性脂肪性肝疾患)
肥満により肝細胞内に脂質が蓄積すると、肝細胞内への糖の取り込みが低下したり、肝細胞からの糖の産生が増加したりするため糖尿病の発症につながります。また、NAFLDの重症型であるNASH(非アルコール性脂肪肝炎)では肝炎から肝硬変へ伸展し、肝臓癌発生の原因になることがあります。
4.心臓周囲脂肪(血管周囲脂肪)
肥満により血管(動脈)周囲の脂肪が増加すると、脂肪から産生された物質が血管の壁に直接影響し、悪玉コレステロールの蓄積による仕組みとは異なる仕組みで動脈硬化を引き起こすと考えられてきています。特に心臓周囲脂肪では心臓を栄養する血管である冠動脈の動脈硬化を引き起こし、狭心症や心筋梗塞の原因となる可能性が示唆されています。
このように異所性脂肪は糖尿病をはじめとした生活習慣病の発症に深く関わっており、その予防には健康的な生活の基本である適量の食事と適度の運動を常に心がけ、できるかぎり標準体重を維持することが重要です。
*標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22