No.167
乳幼児・学童の便秘―生活リズムとの関連
子ども・育児・小児科・産婦人科 | 2012年07月発信
便秘は、排便回数が少なくなり、便の硬さが増し、排便困難(排便時に痛みがあり、さらに血液がつくような状態)を伴うようになった状態を指します。
乳児健診などで、「うちの子は便秘です。2~3日に1回ぐらい、顔を真っ赤にして力んでいます。だから、そのつど、’こより’浣腸をしてやります。」という訴えは、よく耳にすることです。なかには、実際に便秘のこともありますが、問題のないことの方が多いようです。
健康的な乳児の生活リズムは、お母さんが赤ちゃんと一緒に快遊→快食→快眠→快便に関わることで確立します。つまり、よく遊び、幸せな楽しい時を過ごし、母乳やミルク、しだいに補完食(離乳食)等を摂って満足し、心地よく眠れれば自然と、いい「うんち」につながり、便秘等のトラブルにつながることはありません。幼児・学童では、早く起きて、昼間十分に活動し、夜、バタンキューの睡眠が得られれば、翌日も良い生活リズムで生活出来るという訳です。よく遊び(体を十分に動かして活動し)、よく食べ(とくに朝食・昼食をしっかりと)、夜8時を過ぎたら、何も口に入れず、9時半までには就寝して翌朝早く起きれば、きっと、いい「うんち」と対面出来るでしょう。土曜・日曜も同じリズムで過ごしましょう。生活リズムを整えても解消しない症候性便秘は、旅行に出掛けたり、急に生活環境が変わる時などに起こる急性便秘と慢性便秘に大別されます。慢性便秘について解説しますと。
a.単純性便秘
下着に汚れがないこと、お子さんにこれといった情緒障害がない、治療に反応し治りやすい特徴を持ち、4歳以下に多く、ピークは2~3歳です。生活管理の基本は、既に触れました規則正しい排便習慣の確立と食事療法、適当な薬物療法になります。食事療法のポイントは、水分と残渣(かす)の多い食物を多く摂ることです。野菜、果物(とくにプルーン)のほかに、海藻類、こんにゃく、穀類(とくに小豆)の摂取が奨められます。おやつには、スナック菓子よりもお饅頭が適当でしょう。
b.心因性便秘
排便制止(自分でいきんで便を出さなくなる)をして、直腸内糞便貯留(糞づまり)などのがんこな便秘の悪循環の結果、遺糞症(パンツの中へ、知ってあるいは知らないうちに便をしてしまうこと)、ソイリング(知らないうちに、パンツが糞便の液性成分で汚れること)、さらには二次的巨大結腸症になった状態をいいます。幼児から学童にわたってみられ、男児に多い(女児の2倍)といわれています。情緒障害(心理的背景)がみられることが多く、養育態度など両親の側にも。少なからず問題がある場合もあります。発育不全・頻尿・夜尿などの症状を伴うことがあります。
c.症候性便秘
外科的疾患(出生5,000人に1人の頻度でみられますヒルシュスプルング病〔先天性巨大結腸症〕)など、明らかな原因疾患があって生ずる便秘です。意外に多いのは、肛門裂傷で、神経質なおかあさんがお尻をきれいに拭きすぎるために、排便痛が現れて便秘も生じる便秘もあります。