No.158
メディアと子どもたちの成長発達
子ども・育児・小児科・産婦人科 | 2011年08月発信
- 赤ちゃんにおっぱいをあげるとき、赤ちゃんの顔、目ではなく、テレビを見ていませんか?
- おっぱいをあげながら携帯電話でメールを打ったりしていませんか?
- テレビやビデオに赤ちゃんのお守をさせていませんか?
- 子どもが夜遅くまでテレビやゲームで睡眠不足になっていませんか?
- 携帯片手に食事をしたりしていませんか?
- 子どもがインターネットで有害サイトなどと接触していませんか?
- お父さん、お母さん自身がゲームや携帯に夢中になっていませんか?
どうでしょう、皆さん。思い当たることはありませんか?
■これらのメディア※はもう日常生活でなくてはならないものとなっていますが、子どもたちの身体(からだ)や心の発達に大きなゆがみやおくれをもたらす危険なものでもあります。乳幼児期は身近な人とのかかわりあい、遊びなど体験することのつみ重ねによって人間関係を築き、心と身体を成長させます。特に2歳までのお母さんとのかかわりは非常に大切です。
■外遊びが減少し、筋肉特に足を使う機会が少なくなれば、筋肉は弱くなります。今の子どもの足は30年前のお年寄りの足と同じ強さと言われ、長く歩けない、転びやすい、転んで顔から落ちるという子が少なくありません。
■また子どもたちの視力は悪化の一途をたどっています。テレビなどの平らな「平面画面」を乳児期から長時間見続けてどんどん視力が低下しているだけでなく、物を立体的にとらえる「立体視力」が育っていません。距離感がつかめず、顔でボールを受けたり、ボールで突き指をしたり、階段を踏み外したりする子どもが以前よりも増えています。
■室内で過ごす時間が多くなり、年齢とともに発達する自律神経系の機能にも影響があり、血圧調整がうまくいかない、体温調節が出来ないという子どもも増加しています。
■幼児期は話し言葉の基礎が確立する大切な時期です。人と言葉を交わすことなく長時間メディアに向き合っていれば、言葉によるコミュニケーション能力の発達はとまってしまいます。そうした子どもたちは、幼児期には噛み付く、引っ掻く、奇声を上げるなどで「表現」し、年齢が上がるにつれて、刃物、放火などで自分の感情や思いを「表現」するようになっていきます。
■また最近の脳科学の研究で、電子映像メディアに長時間接触すると、大脳の前頭前野という部分に影響することがわかってきました。前頭前野は、理性や道徳心や記憶など、一言で言うと人間らしさに関係する場所なのですが、その機能が悪くなると、自己コントロールが出来なくなり、簡単なことが憶えられなくなります。「メディア漬け」で育った子どもが、抑制がきかず、親を殺したり、若い親が子育てにキレて虐待につながったり・・・また学校では、授業が成立しなくなるような子どもがこの5年間で倍増した・・・などといった状況にもメディアが深くかかわっていると考えられます。
■そのほか生活習慣にも大きな影響を及ぼします。テレビやビデオを見る時間が長いと夜寝る時間が遅くなり、睡眠時間が短くなるとともに睡眠・起床のリズムが不規則になること、そして朝食の摂取が十分でなく、排便の習慣もよくないことが報告されています。
メディアに接触しないノーメディア、テレビをつけないノーテレビの取り組みが全国各地で行われ、すでにその成果を上げているところもあります。お父さん、お母さん、そしておじいちゃん、おばあちゃん、テレビの電源、しばらく切ってみませんか?
※メディア:テレビ、ビデオ、テレビゲーム、携帯用ゲーム、インターネット、携帯電話など