No.141
こどもと絵本
子ども・育児・小児科・産婦人科 | 2010年01月発信
子育て中の親にとって、子どもに絵本を読んであげる機会はかなり多いものです。幼い頃に、母親に絵本を読んでもらったことは、いくつになっても覚えており、その時の雰囲気がよみがえるものです。
大人が、幼い子どもに話しかける時の特徴的な言葉を育児語と言います。育児語は普通の話し言葉とは違って、抑揚が誇張される傾向にあります。赤ちゃんは、この高くて抑揚が誇張された声を好みます。京都大学霊長類研究所の正高信男先生の講演から引用させていただきます。
育児語には男女差があり、女性の高い声は子どもに絵本を読む時、お話をより面白くする効果があります。一方、男性の声は、抑揚がより大きくなり、怖い話をより怖くする効果があります。子どもには安心を与えるだけでなく、恐怖や危険を知らせ抑止することも必要で、抑止は抑揚が大きい育児語で話しかける父親の方がよりうまく与えることができるといえます。
「赤ちゃんにどうやって言葉をかけたらよいかわからない」と悩むお父さんやお母さんは、絵本を道具として赤ちゃんとお話ししてはどうでしょうか。子どもはお話を無条件に好みます。しかし絵本が好きでない子もいます。その原因はまず、読む大人の読み方が悪いことが第一にあげられます。ぞんざいに読むのではなく、自分自身が楽しまなくてはいけません。子どもの目を見て笑いかけながら丁寧に読むことが大切です。時にはアドリブも入れながら、子どもとお話するという気持ちで読むとよいでしょう。もう一つの原因として考えられるのは、次々と違う絵本を読むことです。子どもはいろいろな絵本を読んでもらいたいと思っていません。大好きな絵本を繰り返し読んでほしいのです。
また、よく良い絵本とはどんな絵本かということも話題になりますが、世の中に良い絵本悪い絵本というものはありません。何度も「読んで」と言ってくる絵本が良い絵本です。こんな時大人は辛抱して、子供が好きであるならば何度でも読んでやることが絵本好きにするコツです。そして、絵本の読み聞かせというと母親の仕事と思われがちですが、父親もやらなくてはいけません。育児語を使う割合は、母親であれば9割方使います。しかし父親、特に都会の父親は育児語をあまり使いません。これは、父親の影響力が希薄化していることと無関係ではありません。父親もしっかり育児に参加して、子どもとたくさん会話を交わすことが子どもの自立を促すために大切です。