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No.170

がんについて

内科・精神・老年 | 2012年10月発信

 日本人の死亡原因の第一位は癌や白血病などの悪性疾患です。癌は体の中のあらゆる組織から発生しますが日本人の死因で多いがんは男性では肺癌、胃癌、大腸癌の順で、女性では大腸癌、肺癌、胃癌となります。他の疾患が治療や予防によって減少やわずかな増加に留まっているのに引き換え、癌は人口の高齢化や生活習慣の変化もあり毎年増加しておりその対策は喫緊の課題です。
 
 癌の多くは初期のうちは全く自覚症状がなく、何らかの症状が出て受診された段階では既に進行癌となっていて手術が出来ない状態であることも多く、そこまでゆくと治療が困難です。早期発見、早期治療は癌治療の基本ですがなかなか難しいのが現状です。
 
 しかし癌の原因の研究や治療法の開発は20世紀後半から着実に進んで今世紀に入りその成果が実際の診療の場に生かされつつあります。癌によっては原因が解明され、予防法が確立されたり、治療法が変わり生存率が大幅に上昇するものも現れております。
 
 その代表が胃癌と子宮頸癌です。前者はピロリ菌、後者はパピローマウィルスの感染から癌が発症してくることが判明したのです。ともに予防法としてのピロリ菌の除菌やパピローマウィルスの感染を防ぐワクチン接種が普及してきております。近い将来これらの癌は発症や死亡が大幅に減少することが期待されます。
 
 一方肺癌はまだ治りにくい癌です。これは肺という生命維持に不可欠な臓器に発生し、症状があまり出ないうちに大きくなったり、他へ転移したりして手術が困難な場合が多いためです。この難敵の肺癌ですが朗報があります。いち早く禁煙活動が普及したアメリカでは肺癌での死亡が減少に転じております。現在日本でも喫煙率は男性では減少しております。肺癌での死亡は近い将来必ず減少すると予想されます。タバコは肺癌ばかりでなく全ての癌の発生に関与するばかりか心臓や脳血管疾患にも重大な悪影響を及ぼします。禁煙を勧めるゆえんです。このようにすぐに癌の特効薬が出現する可能性は少ないものの、癌の治療は着実に進歩しております。現在の我々の出来ることはタバコなどの悪しき生活習慣を正して癌になるリスクを軽減させてその上でがん検診を上手に利用することだと思います。