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No.164

腹部超音波検査について

内科・精神・老年 | 2012年04月発信

超音波は人間の耳には聞こえない高い周波数の音波で、一定方向に強く放射され直進性が高いという性質があります。これを利用して腹部に超音波を発信し、その反射波を受信し、コンピュータ処理で画像化して診断するのが腹部超音波検査(腹部エコー)です。

 超音波検査(エコー)は、ここ20年くらいの間にいろいろな分野の診療や治療において臨床応用され、現代の医療では欠くことのできない検査機器として定着しています。エコーがこれほどまでに広く普及した理由は大きく分けて3つ挙げられます。
その第一は、非浸襲的すなわち人体にほとんど悪影響を及ぼさないことです。X線には放射線の被曝、内視鏡検査も偶発症などの危険性が多少なりとも見られますが、エコーに関してはそのような心配は全くと言っていいほどありません。
二番目にあげられるのは検査の簡便性です。検査機さえあれば短時間でかなりの情報量が得られ、またほとんど特別な前処置が要らないというのは他の画像診断にないメリットです。また検査を受ける側の苦痛がほとんどないことも大きな利点ということができます。
第三には、超音波の原理を応用した様々な機能検査、治療がエコーの普及と同時に進行してきたことがあげられます。

 しかしエコーにも弱点はあります。超音波というのは水の中をほとんど弱まることなくまっすぐ進むことができるという性質をうまく応用した検査です。しかし空気に対しては一歩も進めないという弱点があり、このため肺などに対してはなかなか応用できません。また、脂肪は超音波を跳ね返す力が強いために肥満型の人はエコーを当てても良い画像が得られないことがあります。

 従って胃腸や肺などの空気を含む臓器の診断にはあまり効果がありません。主として、肝臓、腎臓、膵臓、脾臓などの「中身の詰まった臓器」と、胆のう、大動脈などの「中に水のようなものを容れた臓器」が対象臓器になります。ただし、胃腸や肺に対しても全く無力というわけではなく、腸閉塞や虫垂炎の診断にエコーが威力を発揮する場合もありますし、大きな胃癌や大腸癌の発見のきっかけがエコーであったという例も少なからず存在します。しかし、いわゆる検診としてのエコーではこういったケースはまれですので、やはり上に述べた臓器を対象に観察することになります。

 もちろん、さまざまな疾患の確定診断がエコーのみで行えるわけではありません。他の検査を組み合わせながら診断・治療を行うこととなります。しかし冒頭に述べたようにエコーの利点(非浸襲性、簡便性など)から考えると、今後も画像診断の一つの大きな柱となり続けることは間違いのないところだと思います。