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No.151

おたふくかぜと予防接種

予防接種 | 2010年12月発信

おたふくかぜとは?

ムンプスウイルスによる感染症で、流行性耳下腺炎、ムンプスともよばれます。潜伏期間は2~3週間。不顕性感染(症状の出ない感染)は3~4割と考えられています。主な症状は、耳下腺(両耳の下部にある唾液を作る器官)の腫れや痛みです。両側が腫れることが多いですが、一部は片側性です。また、他の唾液腺である顎下腺、舌下腺の腫れもしばしば伴います。腫れは多くは3~7日で消失しますが、時に10日以上続く例もあります。発熱は3/4程度にみられます。いわゆる学校伝染病の一つで、原則「耳下腺の腫れがひくまで」は出席停止です。顕性、不顕性とも一度の感染で終生免疫が得られるとされてきましたが、再感染も案外あることがわかってきています。

多彩な合併症

おたふくかぜには多彩な合併症が生じる可能性があります。代表的なものとしては、髄膜炎、睾丸炎、副睾丸炎、卵巣炎、膵炎、難聴などがあります。特に難聴は、かつていわれていたよりかなり頻度が多いことがわかってきました。かつては、1万~数万例に1例とされていましたが、近年のデータは、千例に1例程度は認められることを示唆しています。多くは片側性ですが、この難聴には現在のところ根本的な治療法はありません。

おたふくかぜワクチン

ムンプスウイルスに対する抗ウイルス薬はなく、ワクチンによる予防が非常に重要です。現在日本で使用されているものは、ウイルスを弱毒化した単独の生ワクチンです。1歳以上であれば成人も含めて接種でき、1回の接種で90%程度の免疫獲得率があるとされており、通常1回接種です。しかし、免疫獲得の確実性や将来の免疫力の低下の可能性を考慮し、2回接種も行われつつあります。副作用は少なく、一部に発熱や一過性の軽い耳下腺の腫れがみられる程度です。ただし、ごくまれに、ワクチンによっても髄膜炎や難聴といった重大な副作用がみられることがありますが、自然感染の場合に比べるとはるかに低率であり、ワクチンの重要性は変わりません。また、おたふくかぜに既にかかった人に接種しても、免疫力が強化されるだけで特に害はないとされています。
現在の最大の問題点は、これが任意接種で費用もかかる点です。先進国でこれを定期接種で行っていないのは日本だけです(通常、麻疹・風疹におたくかぜも加えたMMRワクチンを使用)。日本は、世界の中では予防接種については最後進国であり、最近ようやく子宮頸がんワクチン、ヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチンの無料化が検討されていますが、おたふくかぜワクチンについては動きも鈍く、こちらの定期接種化も急務と考えられます。