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No.178 「重症熱性血小板減少症候群」

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2013年07月発信

 アウトドアシーズンを迎え、気になるのが、マダニが媒介する新種のウイルス感染症「重症熱性血小板減少症候群、severe fever with thrombocytopenia syndrome :SFTS」だ。
SFTSを引き起こすウイルス (SFTS virus :SFTSV )は、ブニヤウイルス科フレボウイルス属に分類される新規のウイルスで、ダニによって媒介される。2009年3月~7月にかけて、中国中央部(湖北省及び河南省の山岳地域)で、原因不明の疾患が集団発生したことで本感染症の存在が明らかとなり、2011年原因ウイルスであるSFTSVが確認された。発生地域では、フタトゲチマダニがSFTSVを保有しており、このウイルスに感染した哺乳動物も見つかっている。(動物の発症は確認されていない)中国国内の調査では現在7省で患者発生が確認されている。
 
 日本国内での発生は、2012年秋、海外渡航歴のない成人患者に発病。嘔吐、下痢(黒色便)が出現した。明らかなダニ咬傷は見られなかった。血液検査所見では、白血球数 400/mm3 血小板 8.9万/mm3が著明に低下していた。血液からSFTVが同定され、またSFTSV遺伝子が含まれていることが確認された。ELISA法、IF法による抗体検査は陰性であった。また、病理組織においてSFTSVの抗原、及び核酸が確認され2013年1月国内での第一例目のSFTS患者
と確認された。2013年6月患者24人、死者10人が報告されている(毎日新聞)。
 
 日本のSFTSVと中国のウイルスは別タイプと判明し、以前から日本国内に存在していたと考えられている。現在患者の発生は西日本で確認されているが、今後近畿、東日本でも発生する可能性はある。
 
 マダニは食品等に発生するコナダニや、衣類や寝具に発生するヒョウヒダニなど家庭内に生息するダニとは種類が異なる。マダニは固い外皮に覆われ、比較的大型(2~4mm)で、日本全国の野山、森林、草地など屋外に生息し、普段は日陰に潜んでいるが、血を吸おうとする時、葉の先端に出てきて、動物を待ち構え、臭いや体温、呼気に反応して取り付く。マダニは取り付いてすぐに刺すのではなく、体の柔らかい部位を探し刺す習性がある。皮膚にしっかりと口器を突き刺し、そのまま1~2週間吸血する。SFTSの予防にはマダニに咬まれないようにすることが重要。
マダニの活動が盛んな春から秋にかけて特に注意が必要で、SFTSのみならず、ツツガムシ病や日本紅斑熱などのダニが媒介する他の疾患の予防にも有効。長袖、長ズボン、足を完全に覆う靴を着用し、肌を露出しないようにすることが大事である。屋外から帰って、必ずマダニに咬まれていないか、衣類にマダニが付着していないか確認すること。シャワーを浴びてまだ刺していないマダニを洗い流す、マダニに咬まれている場合は必ず医療機関で取り除いてもらう。
 
 診断:マダニによる咬傷後、潜伏期間6日から2週間で原因不明の発熱、消化器症状、血小板減少、白血球減少、AST, ALT, LDHの上昇を認めた場合SFTSを疑うことが大事である。患者がマダニに咬まれたことに気が付いていない場合や刺し口が見つからない場合の方が多く、診断は困難。
ウイルス学的検査は保健所を通じて国立感染症研究所ウイルス第一部に検査依頼が可能。
治療:有効な抗ウイルス薬等の特異的な治療はなく、対症療法が主体になる。救命例も多く存在する。中国ではリバビリンが使用されているが効果は確認されていない。また、ワクチンはない。
屋外での作業やレジャーには熱中症の危険性も考慮しながら、マダニ咬傷予防のため肌の露出を出来るだけ少なくして活動、楽しんでいただきたい。