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No.101下痢とウィルス

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2005年12月発信

近年「ノロウイルス」なる耳慣れないウイルスによる大規模な食中毒事件、あるいは老人保健施設などにおける胃腸炎の集団発生についての報道が散見されました。
1997年食品衛生法施行規則の一部が改正された際、食中毒病因物質として小型球形ウイルス-SRSV( small round structured viruses )という用語が採用され、
2002年には国際ウイルス命名委員会が正式なウイルスの属名を含めてカリシウイルス科ウイルスの分類を確定し、これに属するものとては、ノロウイルス属「ノーウォークウイルス」(電子顕微鏡ではカリシウイルスの様の形態をしておらず、不適切で歴史的な命名とされている)とサポウイルス属の「サッポロウイルス」という命名がされました。
引き続き、2003年、食品衛生法施行規則の改正時に「ノロウイルス」が採用されました。短期間に「SRSV」→「ノーウォークウイルス」→「ノロウイルス」と改名されたからくりで、あたかも新種の猛威を振るうウイルスが出現したかのような印象を報道の仕方も手伝って世間に与えてしまった背景と言えます。
下痢症患者さんの糞便中に検出されるウイルスであれば何でも起因ウイルスかといいますとそうではありません。レオウイルスやエンテロウイルスは、しばしば検出されますがウイルス性胃腸炎の原因ウイルスとはみなされていません。現在胃腸炎ウイルスとして世界的に認められているのは、ロタウイルス・ノロウイルス・サポウイルス・アデノウイルスの一部・アストロウイルスが挙げられます。
下痢症ウイルスを話題にしている時、散発性胃腸炎を問題にしているのか、ウイルス性胃腸炎の集団発生を問題にしているのか、あるいは、ウイルス性食中毒を問題にしているのかを整理する必要があります。

散発性ウイルス性胃腸炎

(1)小児のウイルス性胃腸炎

感染症発生動向調査5類感染症の「感染性胃腸炎」は、小児の散発性胃腸炎を対象とし、ウイルス性胃腸炎はその一部になります。その中では、ロタウイルスが最も重要で、20%を占め、脱水を伴う重症な下痢症ほどロタウイルスが占める割合が増えます。F群アデノウイルスも乳幼児の比較的重症の下痢症の原因となり、小児の下痢症の5%程度を占めます。一方、少し軽症のものでは、ノロウイルスやサポウイルスも重要で20%含まれます。

(2)成人のウイルス性胃腸炎

成人の急性胃腸炎の原因を究明する研究は進んでいません。成人のウイルス性胃腸炎が重症化するのはまれであると考えられ、ノロウイルスが10~15%程度原因になっていると思われ、最近の報告では約15%程度ロタウイルスが原因となっており、老年期とくに施設等でのロタウイルスの集団感染も少なからずあるとされています。

ウイルス胃腸炎の集団発生

わが国では、下痢・嘔吐・腹痛という症状は同じでも食品を媒介として起こるものは、「ウイルス性食中毒」として処理されます。一方、ヒトからヒトへの感染も食品摂取による食中毒もウイルス性胃腸炎の集団発生として両者の扱いを区別しない米国のウイルス性胃腸炎の集団発生に関する統計では、約25%がヒトからヒトへの感染、75%が食品媒介性すなわち、わが国では「ウイルス性食中毒」とされています。

ウイルス性食中毒

散発性の胃腸炎とは別に、症状としては同じでも、食物を媒介して起こりますと食中毒となります。一般に食中毒というと患者が集団発生するイメージがありますが、患者が1人でも食中毒となります。ただ、ウイルス性食中毒は、1件あたりの患者数が多い傾向にあり、過去の例ではアストロウイルスやC群ロタウイルスが1件あたり多数の患者を出しています。食中毒は、食物を媒介して起こる健康被害で、その症状は胃腸炎に限りません。例えば、A型およびE型肝炎(4類感染症)も、食物を媒介して起こればう「ウイルス性食中毒」となり得るのです。「ウイルス性食中毒」の病因の95%は、ノロウイルスとされています。